ねえ、ほんとにたすけてくれる?/オリジナルバージョン


「ねえ とうちゃん、つれないねえ」
「ああ、つれないな」
「さかな、いないんじゃない?」
「どうかな。もぐって みてこいよ」
「やだよ。とうちゃん、みてきてよ」
「やだよ。じょうだんじゃないよ」

「とうちゃん、やっぱり さかな いないみたいだよ」
「おい、そんな かっこうしてると、おっこちるぞ」
「だいじょうぶだよ」
「おっこちたって しらないぞ」
「なんで? とうちゃん、たすけてくれるでしょ?」

「そりゃ、おっこちたら たすけるよ」
「ほんと?」
「でも そのまえに、おちないように
 するのが さきだろうが」
「じゃあ、とうちゃん──」

「さめに たべられそうになったら?」
「え? さめ?」
「とうちゃん、たすけてくれる?」

「しょうがないなあ。さめは やだけど たすけるよ」
「ほんと?」
「でも そのまえに、とうちゃんが くわれるかな」
「えっー!」
「そのあいだに なんとか にげろよ」
「やだよ。そんなの──」

「ねえ とうちゃん、つれないねえ」
「ああ、つれないな」
「とうちゃん、あのさあ。
 かいぞくって いまも どっかに いるの?」
「うーん。どうだろうなあ」

「もしも かいぞくに つかまったら
 とうちゃん たすけてくれる?」
「うーん、がんばって たすけるけど──」
「けど?」
「でも そのまえに、
 かいぞくに とられるようなものないし
 つかまらないんじゃないか?」
「じゃあ、とうちゃん──」

「おばけが でたら たすけてくれる?」
「ほんとに でたら たすけてもいいけど
 でも そのまえに、おばけって ひとを おそうのか?」
「じゃあ、とうちゃん。それじゃあ さあ
 えーと、えーと、えーと──」

「すっごい じしんが きて、つなみが きて、
 かざんが ばくはつして、たいふうも きて、
 もう ぐっちゃぐちゃに なってもさ。
 とうちゃん! ねえ、ほんとに たすけてくれる?」
「もちろん。なにが あっても ぜったい たすける。
 でも そのまえに──」
「そのまえに?」

「しょくりょうとか みずとか
 いっぱい よういしとくぞ」
「うん」
「じぶんが たすかったら
 こんどは ほかの ひと、
 たすけないとな」

「あっ、とうちゃん、えさ なくなってるよ」
「ほんとだ。さかなが いる しょうこだ」
「ねえ とうちゃん、えさ つけてよ」
「なんでだよ」
「だって きもちわるいんだもん」
「なに いってんだ。じぶんで やれ」
「なんだよ。たすけてくれるって いったのに──」

「ねえ とうちゃん」
「ん?」
「もしも とうちゃんが あぶないときはさあ、
 ぼくが とうちゃん たすけるからね」
「ほんとか?」
「うん」

「じゃあ、とうちゃんが かあちゃんと けんかしたら、
 とうちゃんのこと たすけてくれるか?」
「やだよ。かあちゃんを たすけるよ」
「なんでだよ。ずるいぞ」
「だって とうちゃんのほうが つよいでしょ?」
「そうかあ? かあちゃんのほうが つよいだろ?」

「うーん。かあちゃんのほうが つよいかなあ。
 ──じゃあ、とうちゃん」
「なんだ?」

「とうちゃんと かあちゃんが けんかしたら、
 とうちゃんのことは たすけないけど──」
「けど?」
「ぼくが いっしょに あやまってあげるよ」
「なにぃ? とうちゃんが わるいのかよ」
「でも そのまえに──」
「そのまえに?」

「けんかしないでね」

(おしまい)


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